ブロ山詣で その24
自分の気持ちを、自分でもよくわからなかったイニス。
上の写真の時も、何でこんなに山から下りるのが嫌なのか、わからなかったんでしょうねぇ。
仕事を途中で終わらせるなんて、お金を払うのをケチるのかと、言っている通りにしか思ってなかったの
かも。
でもこのモヤモヤは何なんだ、とムカムカしてこうなる。。。
本当に不器用なイニスです。
イニスは自分の中の気持ちと向き合うということさえ、わからなかったのではと思います。
あまりにも馬鹿?ではなく、そういうことを誰にも教わってこなかったんでしょう。
イニスの父親は、ゲイの男性を仲間とリンチの末に殺害してしまう最低の男です。
多分、人一倍、間違った男らしさを強調する父親だったんでしょう。
なのに、亡くなった時、コーヒー缶に24ドルしか残してなかったなんて。
一生懸命、自分たちの牧場で働いているゲイカップルを馬鹿にしてる暇があるなら、もっと働けよと
思います。
それとも、頑張る彼らに嫉妬でもしていたんでしょうか。
とにかく、父親として威光をふりかざすのなら、自分にもしものことがあった時のことも考えてこそ、
男というものなのに、一体なんやねん、こいつ、と何度も突っ込みました。
そして、この仮の男らしさしかないところをイニスも受け継いでしまってるんですよねぇ。
まぁ、お手本がこれなので。。。
小さな子どもがいるのに、無駄な男らしさで喧嘩をうっていくこのシーン。
アルマの身になったら、ほんと、かなわんと思いますねぇ。
強いという意味を間違っている酷い父親、この時代、アメリカの田舎はこんな男ばかりだったん
でしょうか。
いやいや、自分より弱者を守るという気持ちを持っている男らしい男だっていたはずです。
ブロ山の中では、そういう男にはお目にかかれませんでしたが。
この時の、アルマに対してのこの顔もねぇ。
女のお前の仕事より、男の俺の仕事の方が大事なんだという感じ。
一昔ではなく、今でもこんな男いますよね。
そういえば、一途といえばそうだけど。。。
自分と別れさせたがってるラリーンの父親から、手切れ金をもらって、それで牧場をやろうという
ジャックも大概なんですよねぇ。
愛するイニスと一緒に暮らしたいジャック。まぁ、かわいいんですけど。
うーん、こういうこと書いてると、イニスもジャックも最低の男たちということになってしまいます。
これでは、一番最初にブロ山を観た時と同じ気持ちやんと思いながらも、その時の自分の状態により、
この映画は観る度に違う感情になって、落ち込んだり、ジャックへの愛を確認できたイニスは、これ
はこれで幸せなのかなぁとか思ったり。
ジャックは亡くなったことで、イニスの愛を得て、イニスはジャックが亡くなって、初めて安心して、
彼に愛を誓えるという文章を読んで、たしかにそうかもとも思うこともあります。
でも。。。10年経って、自分も年を取り、人生の後半に入ってくると、やはりイニスの孤独は
辛すぎると思うんですよねぇ。。。
原作にはない、お父さん大好きな娘の存在は、アン・リー監督が考えたんではないのかなと思うん
ですが、観ているものとしては、彼女がいてくれてありがたかったですね。