「スリー・ビルボード」鑑賞。
『スリー・ビルボード』予告編 | Three Billboards Outside Ebbing, Missouri Trailer
「スリー・ビルボード」を公開初日の2月1日に観に行って来ました。
この作品、大阪では10館ほどしか上映してないんですが、その中の1館がなぜか家から
1番近い映画館でありまして。。。
これは奇跡に近い!(大げさじゃなくて)
観に行くなら、難波か梅田に出ないとだめだろうなぁと思っていたので、ここは、すぐに
観に行こう!と、公開初日に行って来たのでした。
早く行かないと、すぐに終わりそうな気がするし。。。
実際、公開初日、観客20人ほどだったし。。。
ほんと、近所の映画館、字幕より吹き替え優先だし、すぐに小さなスクリーンになって
しまうし、洋画ファンには優しくないところなんです。
観に行く人が、少ないというのもあるんでしょうけどね(..)
まぁ、とにかく、この「スリー・ビルボード」が上映されるのは、すごくありがたくて、
ラッキーでありました。
その日が映画の日でもあったしね。
さて、この作品、監督、脚本がマーティン・マクドナーなんですが、彼は劇作家さんと
しても有名ということで、脚本がとても巧みなんですね。
舞台はアメリカ中西部のミズーリ州エビングという架空の町。
そこで小物店を開いている(なにげに置いてある小物がかわいい)、フランシス・マクドー
マンド演じるミルドレッドが主人公なんですが、彼女が廃れて何年も放置されている3枚の
立て看板に、広告をのせることから話が始まります。
はじめに貼った予告編にあるような3枚の立て看板であります。
ミルドレッドの娘は、レイプされたあげくに殺害され、その上遺体を焼かれてしまうと
いう、これ、母親としてミルドレッドの気持ちを思うと、この事だけでも映画館で半分涙目
でありました。
彼女は、他人に対しても、娘に対しても口も態度も悪いんですが、その口の悪さから、
娘に悲劇が起こるすぐ前に、酷いことを言い捨ててまして、それが本当に深い悔恨となって
いるんですね。
まぁ、ミルドレッドのような言葉は、さすがに娘に言ったことはありませんが、知らない
うちに、娘たちを傷つける言葉は私も言っているかも知れません。
それが突然娘を酷い状況で失ってしまった気持ちは、もうそれだけで、彼女がどんなに
態度も口も悪いとしても、感情移入しまくりでして、町の警察の保安官で皆から尊敬されて
いる、ウディ・ハレルソン演じるビルや、人を差別しまくりのアホな警察官、サム・
ロックウェル演じるディクソン、そして、町の神父や、息子の学校の学生だとしても、
ムカついて抗議するその姿を責められませんでしたねぇ。
だって、酷いことされて、遺体まで焼かれてるんですよ、そして、その犯人が捕まって
なくて、警察に行ったら皆ぼや~っとしている(ように見える)んですよ、母親だったら、
そりゃ怒るよ、我慢できないよ、と思うんです。
映画は、ミルドレッドの立場から、保安官のビルに移り、そしてサイテー野郎、ディクソンに
移っていき、話は意外な方向に向かっていくんですが、やり過ぎやん、と思いながらも
私的にはミルドレッドから気持ちが離れませんでした。
普通に会っていたら、親しくなっていたかは疑問ですが(笑)。
でも、保安官ビルも深い事情があり、悩める人なんですね。
登場の時こそ、デスクの上に足を乗せ、エラそうやん、と思わせた彼は、とても誠実な
保安官でありました。
彼も、ミルドレッドの娘の死には、保安官としてだけではなく、気持ちを砕いていたはず
です。
彼にはとてもかわいい娘が2人、いるんですよね。
このビルが、とてもいい人で、しっかり人を見てるんですね。
そして、それがサイテー野郎、ディクソンを変えていくんです。
信頼する人が、しっかり自分のことを見ていて、考えてくれていたということは、それが
支えになって、自分さえ知らなかった己自身を見いだしていくというのを、ほんの短い
時間で表現した、サム・ロックウェルは素敵でした。
さすが、ガイがインタビューで誉めまくっていただけありますわ(*^^*)。
そして、その変化の始まりのシーンで、オレンジジュースを差し出して、ストローの向きに
まで気を使ったレッドには泣かされました。
こんなに繊細なシーンを描くマーティン・マクドナー、やるなぁ。。。
母親に反抗しているようでいて、ちゃんとフォローしてくれる息子の存在にもホッと
させてもらいました。
息子のロビーくんを演じたルーカス・ヘッジズ、若いけど、いい役者さんですね。
そうそう、予告編にもチラッと出ていますが、ティリオンさんこと、ピーター・ディンク
レイジさんが出てるんです(^_^)v
町の人に、変人扱いされていくミルドレッドが、このピーター・ディンクレイジ演じる
ジェイムズに対しては、「私に気がある?笑っちゃうわ」みたいな態度をとって、助けて
もらっても見下した態度を取るんですね。
人間は残酷なものです。
でも、ラスト近くには、そんな人間も捨てたものではないというシーンが待ってるんですね。
それを感じることが出来たのは、ほんの短い台詞と、明るい陽射しでした。
とても印象的なシーンであり、これで、とても余韻の残る作品になったと思います。